
鍼灸専門 3,300円
痛くない鍼 ひとりひとりに合わせた治療

アトピー性皮膚炎の鍼灸治療は鍼とお灸を組み合わせて診ていきます。
アトピーに苦しむ原因として①自然とともに暮らす生活から都市型の生活へ変わったことが挙げられると感じています。また②スマホ、パソコンの影響(脳が休まらない)、LEDの光の刺激等が私たちの心身のリズム(自律神経系)にストレスになる、無意識のうちに積み重なるこれらの要因が拒絶反応として皮膚の状態に表れていると考えます。
脱ステロイドと鍼灸との併用
皮膚を元気にする(生き生きとさせる)効果のあるツボは実際に脈診をしながら決めていきます。最初からアトピーにはこのツボ、と言うのではなく、その日その時の脈の状態、皮膚の状態(ツボの状態)から判断します。
いわゆる、脈の状態が力ない状態であることが多いのがアトピーで苦しむ方の特徴です。いい脈とは、強すぎず弱すぎず、滑らかな感じの脈です。皮膚の状態がいい時(楽な時)には脈も元気さがあり、脈を抑えている術者(鍼灸師)の指を押し返す力が宿っているものです。皮膚の2枚目、3枚目を強くする、と言うのは例えではありますが実際に内臓、自律神経の働きがしっかりとしてくると脈も元気になり内側から気力体力が出てきます。皮膚を元気にしていくのも内側から元気が出てくるのと呼応するように鍼灸治療を行います。
かゆさも時間帯によって、日によってつらさに差がある場合、力ない脈の中にも「差」があります。ステロイドは塗って表からかゆさを抑えるのに対して、鍼灸は内側からかゆさ(本来の身体の、皮膚以外の要素も含めて)に対して抵抗力をつけていくことを行います。
痒さへの抵抗力とは、同じ「かゆい」、「皮膚が痛い」と言った感覚の中でも耐えられる感覚かそうでないかと言う意味です。耐えられる感覚の範囲内に徐々に近づけていくためには内側、内臓や自律神経の働きから身体の状態を強くしていくことが必要ですのでステロイドをやめている方、使用中の方それぞれの状況に応じて脈を診て効果のあるツボへ鍼、お灸を行い都度、脈や皮膚の状態(皮膚の滑らかさが出ているかどうか)を一度の治療の中で確認をします。
体質的にも昔の人の方が頑丈でメンタル的にもタフであった
逆に言えば現代は昔にはなかった精神的な苦痛や食生活の変化など、私たちの心身を頑丈にするのではなく、疲弊させる要素が増えたことも皮膚症状に悩む方が増えたことと無関係ではないと感じています。
また、昨今の異常気象、特に夏の異常な暑さもアトピーの症状の辛さの大きな要因となっていると感じています。脈の状態も季節に合った自然な脈の状態からは程遠い脈の状態である方が多く、やはり季節変化が急であるために皮膚の状態も季節に合わせて変化をするのに忙しく、身体が季節についていけないことを皮膚、脈が現しています(夏は汗を出す皮膚の状態、冬は体温を逃がさないために皮膚が引き締まる)。慢性的な皮膚の辛さの場合、年間を通して体調を整えることも視野に入れる必要がある場合もあります。
本来、季節変化がゆっくりであれば例えば夏から秋にかけて徐々に皮膚が引き締まり冬の寒さに耐えられる身体(皮膚)の状態をつくる準備がなされるべきなのですが、そういった余裕がないまま次の季節に移る傾向が昨今はあることは、いかに今後私たちは自身の身体を守っていくべきかと言う点で昔とは異なる生活環境を考えていかなければならない時代となりました。スマホ、パソコン、人工的な加工された食品、空気や飲み水の質等の影響などからも身を守ることを考えながらいかに自然な心身のリズム(気の巡りのいい状態)にしていけるかが皮ふの状態を保つ上でとても大切になります。身近なところで出来ることは自然な旬の野菜や果物を食べることです(アレルギーの状態により食べ物を選ぶ必要がある上で)。
実際の鍼灸治療
〇環境やストレスなどに対して抵抗力をつけていく
〇睡眠を取りやすくなるようにしていく
と言ったことはアトピーで苦しむ方にとって理想と言えることでしょう。いきなり理想的な状態になるのは難しいと思われることと思いますし、実際良くなるには時間のかかるものです。そのために効果のあるツボに痛みのない鍼、熱くないお灸を行いながら、本当に身体の奥底の、いわゆるよく言われる「内側から」、力、地力がつくようにしていく治療となります。地力=自力で、自分の自然治癒力がしっかりと発動することが実感できるようにしていくことが鍼灸を行う上で、効果の発動と関連があります。
効果の発動とは
・かゆみ
・痛み(かゆみも混ざった感覚)
・じっとしていられない(あまりの痒さに)
・皮膚の感覚(つらさ)を通り越してめまい、吐き気さえする
・あまりのつらさに気を失う
このようなつらさを抱えている方にとって、皮膚を掻いてしまうことにより浸出液が出たり、出血(下着が汚れる)を繰り返し、皮膚の変色、皮膚が硬くなる、かさぶたが出来ては落ちてを繰り返す、ぼろぼろと皮膚がはがれる、等と言うこと自体がとても苦痛で、皮膚の辛さだけでなく精神的にもとても疲れる、ひどいと起きていられない、通常の生活ができない、寝ているしかない、と言った方もいらっしゃいます。
とても体力も消耗します。
本当に効果が出るためには実際に、本当に内側から身体の状態を良くすることをしていくしかなく、皮膚の問題だけでなく気力体力を補うための鍼、お灸を行います。結果的に時間はかかっても気力体力が補われることをしながら皮膚の状態が好転してくるのを待つ、と言うスタンスになります。
掻いても搔き壊さなくなる
いい変化が出る場合、かゆさはあるが、以前のように身体の奥底から(ひどいとお腹の奥からかゆいような)のかゆみは薄れて、皮膚の表面に近いところでのかゆさ、と言う感覚に変化してきます。
上手くいった場合の話ですが、このような状態になると、確かにかゆさ自体はあるのですが、掻いても皮膚が負けない、以前のように出血や浸出液が出にくくなってきます。同時にこの状況になると身体も動かしやすくなり(皮膚が伸びやすくなる?)、また精神的にも安定しやすくなります。
このタイミングが好転してきた状況を確認できる時です。この状態になるまでにも時間を要しますが、この状況になると楽になったと実感できるくらいになります(かゆさのレベルが)。
実際の鍼灸治療は、鍼は痛みを感じずに、お灸も熱さを我慢しない程度に、ツボの数も少なめにし、心身の状態を脈診(みゃくしん=手首のところの脈の元気さを診ます)をしながら皮膚の状態が程よい、よい感覚になるように調整をしていきます。
鍼(手脚のツボに)・・・季節変化により締まる、緩むと言う「変化」をする皮膚の状態の調整
お灸(背中のツボに)・・・皮ふの修復に裏側で支援をしてくれる体力面、抵抗力をつける、免疫力を上げる
と言うことを目的とするからです。皮ふの状態だけを診るのではなく本来持ち合わせている自然治癒力を生かすために身体の内側の調整をしていかないと皮ふそのものにも抵抗力がつかないと考えるからです。(折り紙で折った鶴をつなぎとめている細い糸は表面からは見えませんが華やかな千羽鶴を成り立たせる上で無くてはならないものです)。
陽の季節 | 有効な穴 | 陰の季節 | ||
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立春 | 2月4日ごろから | 水穴 土穴 (穴) | 立秋 | 8月8日ごろから |
雨水 啓蟄 | 2月19日 3月6日 | 水穴 火穴 | 处暑 白露 | 8月22日 9月6日 |
春分 | 3月21日 | 水穴 土穴 (穴) | 秋分 | 9月23日 |
清明 | 4月6日 | 水穴 火穴 | 寒露 | 10月8日 |
土用 穀雨 | 4月17日 4月20日 | 火穴 金穴 | 土用 霜降 | 10月20日 10月22日 |
立夏 | 5月5日 | 木穴 土穴 金穴 | 立冬 | 11月8日 |
小満 芒種 | 5月21日 6月6日 | 木穴 金穴 | 小雪 大雪 | 11月22日 12月7日 |
夏至 | 6月22日 | 木穴 金穴(穴) | 冬至 | 12月22日 |
小暑 | 7月7日 | 木穴 金穴 | 小寒 | 1月6日 |
土用 大暑 | 7月20日 7月23日 | 火穴 金穴 | 土用 大寒 | 1月17日 1月20日 |
表:木は春、火は夏、土は各季節の間、金は秋、水は冬 と言う意味でそれぞれのツボの使い分けをします。
鍼は目に見える症状としては現れないけれど苦痛を感じる「気」の調整に効果がありお灸は実際に形に現れる(皮膚の荒れ、色の変化)病変の調整に効果があると言う考え方に基づいています。
季節に応じて脈の状態も変化しますが調子が悪いときには季節に応じた脈の状態でないことが多いです。たとえば夏は脈が浮いている、冬はやや沈んでいるのが季節に合った脈の状態なのですが夏なのに冬のような脈の状態であることがあります。こうした脈のずれを現在の季節の脈に戻してあげる調整は全身的な調子を上げていく上でとても大切です。お通じや睡眠などにも関わってきます。もちろん皮膚症状とも大きな関りがあります。
「虚邪はその季節の母穴を補い、 実邪はその季節の子穴を瀉す。」
虚邪 前の季節の脈 | 今の季節 健康または正邪 | 実邪 次の季節の脈 |
石 | 春(弦) | 鉤(洪) |
弦 | 夏(鉤) | 緩 |
鉤(洪) | 土用(緩) | 毛 |
緩 | 秋(毛) | 石 |
毛 | 冬(石) | 弦脈 |
弦脈 | ➡ | 木穴 |
鉤(洪)脈 | ➡ | 火穴 |
緩脈 | ➡ | 土穴 |
毛脈 | ➡ | 金穴 |
石脈 | ➡ | 水穴 |
気とは形に見えないものを意味します。心の状態や昼間と夜で身体のリズムが異なる(活動と休息)ことは自律神経と言う言葉で表現することはできますが一人一人の症状の本質的なつらさを過去、現在、未来と時間軸で捉えることは現代医学の不得意とするところです。客観的なデータとしての数値(血液検査)や画像診断により肉眼的に見ることのできるものに対して「客観的に見ることはできなくても実際に感じることができるもの」の存在を否定すことはできません。季節変化により有効なツボも変わります(上図)。特にツボの反応、脈の状態が現在の季節とどのくらいずれているかにより有効なツボが決まってきます。季節に合った身体にしていくためのツボに鍼、お灸を行うということが大切になります。
血(けつ)とは客観的に見ることのできるもの(血液検査の結果や画像診断だけでなく、形に現れるものそのものとしての症状)を言います。皮膚の状態が良くないことも「形」に現れた症状として考えます。血を「ち」つまり赤い血液だけを意味するのではなく「けつ」と言う読み方をするのは実際に実在する私たちの身体の組織そのもの(内臓はもちろん爪や髪の毛までも含む)を総称したものとして考えます。この気と血(けつ)と言う認識できないもの、認識できるもの二つの要素により私たちの身体は成り立っています。皮膚の色の変化、慢性的なつらさの動かない状態も血(けつ)の病変であることを示します(変化が著しい病変は気の病と位置付けます。気の病とはいわゆる「気のせい、気持ちの問題」と言う意味とは違い、つらさの程度が位置に血の時間帯や日によって波があることを言います)。
精神状態など客観的な数値としてあらわすことのできない要素と実際に身体に何らかの異常(皮膚の状態)として現れた症状の関連はひとりひとりの気質、体質により鍼灸による調整も画一的なものではなくその方の素因(気質、体質)に合ったものでなければなりません。
精神的な面でのケア等形に現れない要素に対しては鍼が向いています。
形に現れている皮膚の荒れ、血液検査の異常などの改善を目的とした調整にはお灸が向いています。
ただこれも完全に二つに分けられるものではなく鍼を行うにもお灸を行うにもその加減(鍼とお灸の量的、質的な組み合わせ)も当然ひとりひとり異なります。ひとりひとりの置かれている状況が異なることは当然ではありますが、体力的な要素、メンタル的な要素の双方をその方に合った内容で調整していかなければなりません。陰陽論と言う考え方がありますが、昼と夜では身体(心身のリズム)が異なるように季節の変化(暑さ寒さ)に体がついていけない、日常生活を送る上でも飲食の不摂生、過度の疲労(精神の消耗)等、一定のリズムを保って生活することがなかなかできない状況が活動と休息と言う「陰と陽」のリズムを狂わす要因となります。
陰と陽とは本来、私たちの身体(心)に備わっている自己調節機能のリズムのことでもあります。このリズムが本来の調子を失うことで「その人にとっての危険信号」を発します。ある人にとっては頭痛であり、またある人にとってはお腹の調子、睡眠、、、アトピーの症状で苦しむ方にとってもこれらの自然のリズムを常に考えたうえで鍼灸を行っていきます。
アトピーだけに限らず鍼灸を受けにいらっしゃる方に共通すること。
これらの現代社会における心身への負荷を軽減させることも同時に考慮して皮膚の状態をよくしていく鍼灸を行います。
鍼灸治療ではありませんが、ひまし油シップ、リンゴダイエット、腸内洗浄を行うことで皮膚の状態を楽に保ちやすくなります(もちろん個人差はありますが)。テンプルビューティフルと言う会社でこれらを扱っています一度調べてみてはいかがでしょうか。鍼灸と併用されることで効果も期待できます。ただ、長年に渡るアトピーの場合は効果が出始めるまでに時間がかかる場合が多いです。
アトピーに限らず自律神経のバランスが崩れている場合には深い呼吸ができていないことが多いです。呼吸が深くなるように鍼灸で調整することで皮膚の状態が良くなる確率が高まります。
深い呼吸ができるようになると胸や頭、目の重さが軽くなり精神的にも落ち着く効果があります。同時に見られる変化として皮膚の状態が滑らかな感じになります。背中の左右のコリ(左右に偏ったコリの見た目の高さ)も整いやすくなります。このことは内臓にもいい影響を及ぼします(消化吸収排泄を含めた自律神経の働きを良くする)。
アトピーの方の中でも暑さに弱い方にとって、頭や耳の周りが涼しい感じで、足の冷えが楽な状態になることが大切です。
できるだけ自然なものを摂り、睡眠状態(夜間のかゆみ)を良好なものにするために食事と睡眠の調和が取れるようにセルフケアについてもお話します。
当院におけるアトピーの鍼灸治療は少なめの刺激の全身治療です。
脈(手首のところの脈)を診て睡眠、食欲、お通じの状況を探り、声の張り(声の明瞭さ)、実際の皮膚の状態を診て一人一人にあったツボに鍼、またはお灸を行います。
施術当日、または翌日にだるさや、お腹が下る等の反応が現れる場合がありますが一時的なものですので心配はありません(数時間から1日、長くても2日程でだるさは取れます)。
身体、心が鍼灸治療により「動かされる」ことにより「いらないもの、出したほうがいいもの」を心身が出そうとする反応と考えていただけたらと思います。
こうした反応のことを東洋医学では「好転反応(こうてんはんのう)」と言い、良くなるために必要な反応です。鍼灸治療を続けていくうちに少しずつ気持ちが落ち着き、皮膚の状態が楽になるようにお手伝いさせていただきます。
下図はそれぞれの経絡の働きが盛んになる時間を示してあります。アトピーの鍼灸治療を行う際に「どの経絡、どのツボをどの時間帯に鍼灸を受けていただくか」と言う意味を示しているとも取れます。アトピーでお悩みの方にとって、より効果を高めるために経絡、ツボを脈を診ながら確認して鍼灸を行います。